2025年の路線価を読む

7月1日は、毎年恒例の「路線価」の公表日でした。今年も新聞やテレビなどで大きく取り上げられ、地価の動きが注目を集めた一週間となりました。
そもそも「路線価」とは何でしょうか? 似たような言葉がいくつもあり、混乱しがちです。
改めて整理しておきたいと思います。
土地の価格については、「一物四価」だと言われます。
まず1つ目は、「実勢価格」。実際の取引価格です。二つ目が「公示価格」です。これは不動産鑑定士など専門家が評価した価格をもとに、国土交通省が毎年3月に公表するもので、土地取引の指標となる基準価格です。三つ目が今回のテーマである「路線価」。これは主に相続税や贈与税を計算するために使用されるもので、公示価格の約80%程度が目安とされています。四つ目は「固定資産税評価額」。こちらは3年ごとに市町村長が評価し、毎年の固定資産税や都市計画税の課税標準となる価格で、公示価格の約70%程度が目安とされています。
今回はこの中でも、税務や資産評価の現場で頻繁に登場する「路線価」にフォーカスし、2025年の動向を見ていきたいと思います。
今年の路線価を一言で表すなら、「インバウンド」です。
上昇率トップは長野県白馬村で、なんと前年比+32.4%の上昇。 次いで北海道富良野が+30.2%、東京・浅草が+29.0%、岐阜県高山市が+28.3%と、いずれも外国人観光客に人気の高い地域が並び、軒並み30%前後の上昇率となりました。
円安、それにともなう外国人観光客の急増、そして地域ブランディングの成果が、路線価に反映された形です。
銀座四丁目、全国トップ40年連続──でも毎年場所が違う?
今年も全国で最も高い路線価だったのは銀座四丁目交差点で、1㎡あたり4,808万円(前年比+8.7%)。これで40年連続の全国トップです。
──ところが。 報道では「鳩居堂前」とされている。そういえば少し前は服部セイコーの時計台前ではなかったか。あるには山野楽器前でなかったか? 気のせいか? 気になって落ち着かない。そこで国税庁の路線価をみてみました。
実に興味深い事実が判りました。

中央通り沿いの銀座四丁目交差点付近は、4地点すべてが4,808万円で並んでいるのです。つまり「1か所がトップ」なのではなく、「4か所が並んでトップ」だったというわけです。その意味では、銀座三越前も、日産前も同じく全国トップだ。なぜそのように報道されないのだろう。晴海通りにも面しているからか? むしろ角地の方が土地の価値は高いだろう。 いずれにせよ鳩居堂の宣伝効果は抜群だ。

ちなみに、縦方向に交差する晴海通り沿いは中央通り沿いと比べると金額はやや下回っており、銀座中央通りの突出ぶりが明らかになっています。
都心の主要地点──比較表
その他の都心部でも着実に路線価は上昇しています。以下は、主要エリアの路線価と前年からの変化率です。麻布台ヒルズ前の路線価水準は相対的にはそれ程高くないものの、伸び率が突出して高くなっているなどの特徴がみられます。
地点 | 路線価(1㎡) | 対前年比 |
銀座四丁目交差点 | 4,808万円 | +8.7% |
渋谷スクランブル交差点 | 3,440万円 | +6.7% |
新宿三丁目交差点 | 2,920万円 | +4.6% |
東京駅丸の内口前 | 2,545万円 | +0.8% |
表参道交差点 | 1,984万円 | +6.9% |
青山一丁目交差点 | 1,164万円 | +5.1% |
六本木交差点 | 959万円 | +5.8% |
麻布台ヒルズ前 | 475万円 | +13.9% |
※地点は筆者が気になる場所を任意で抽出。路線価の高い順に記載。
地価の記憶と行方
実は、私は子どものころ、父親に以下の質問をしたことがあります。あれは1989年頃、バブルの頂点にあった時代でした。
「お父さん、地価はもう下がらないの?」
父は間髪いれずに「下がらないと思うよ」と答えました。
その言葉を今でもはっきり覚えています。しかしその後、日本は「失われた時代」に突入し、地価は長期にわたって低迷を続けました。
そしてそれから35年後の今、2025年の路線価を見ると、再び上昇の波が訪れているようです。インバウンドを背景とした都心部、観光地の地価上昇──35年前にはインバウンドはありませんでした。
それが構造的な変化によるものなのか、それとも一時の加熱に過ぎないのか。今月20日に控える参院選では日本は海外や外国人とどのように向き合うのかが最重要テーマの一つです。
私は、あの時の父の言葉を思い出しながら、今この変化を見つめています。来年7月にまた新しい路線価が発表される頃、私たちはどんな地図を広げているのでしょうか。ここから先一年で何がどう変化するのか、しっかり見届け来年の路線価公表時には改めて当サイトでご報告できるように注視していきたいと思います。
国税庁路線価オフィシャルサイトはこちら
(出所:国税庁HP、他各種報道等に基づきHATTO COMPANY株式会社作成。)
※上記はHATTO COMPANY株式会社の独自の見通し等に基づき作成されており、その内容の正確性を保証するものではありません。
さあて、私達の次の世代、はたまたその次の世代にはどうなっているんでしょうねー。
情報興味深く拝読いたしました。
いつも配信楽しみにしてます!
嬉しいコメントありがとうございます!励みになります☺
興味深い内容であっという間に読んでしまいました。
今後の配信も楽しみにしています!
ありがとうございます!新しくみたこと学んだことなど、友人寄稿いつでもお待ちしています!
北海道、長野県、岐阜県などの路線価が大きく上がっているとは驚き❗️
しかしインバウンド景気のバブルはいつか弾けるような気がするね。
トランプ関税の影響で当分円安は続くと思うが、円高傾向になって為替の影響が出始めた時が要注意かな
為替は大事ですね。ドル円はかつては76円台の時代がありましたね。金利が上昇すると為替は円高方向、加えて借入コストが上昇し資産価格は低下しやすいので日銀は金利を上げにくいかもしれませんね。