一人ユニコーン

昨今、「お一人様」は全く珍しいものではなくなりました。食事、旅行、カラオケ、そしてスポーツといった活動までも、一人で楽しむことは日常的な光景となっています。
一人で過ごす時間は、物事を深く考える場でもあります。家族や同僚、仲間と過ごす時間の有無にかかわらず、こうした一人の時間を持つことは本人にとって大切です。一方で、周囲から見るともしかしたら「自分中心の人」という印象を与えてしまうこともあるかもしれません。
今、この「お一人様」は、ついに企業経営の領域にまで広がろうとしています。OpenAIのサム・アルトマンは次のように述べています。
「近いうちに、一人で時価総額10億ドルの会社をつくる人間が現れるだろう」
時価総額が10億ドルを超える未上場企業は、ユニコーンと呼ばれます。かつては大規模組織や豊富な資金を前提に語られてきましたが、AIの進化によってその前提は根本から変わりつつあります。
人間がつくる企業の限界
企業には常に不確実性が伴います。経営者の判断によっては企業が揺らぎ、事業に関わる人間が増えるほど意思決定は遅れ、妥協点を見出すのに時間を費やすようになります。また従業員は、やりたくない仕事を任されたり、合わない上司に合わせたりといった状況を抱えることもあります。こうしたことが積み重なると、組織全体の効率を下げかねません。さらに待遇や労使関係の調整にも多大な労力が注がれ、組織が大きくなるほど内部統制の負担は増加します。こうした人間の集団特有の調整や軋轢は、結果として企業の成長速度を阻害してきた面があるといわれます。
一人ユニコーンがもたらす変化
一人ユニコーンには従業員が存在しません。組合もなく、給与交渉も不要で、労使摩擦に煩わされることもありません。さらに経営にAIが組み込まれることで、判断は一貫し、業務遂行のモチベーションは一定に維持され、休むことなく改善が繰り返されます。これまで不可避とされてきた「マネジメントリスク」という概念そのものが、大きく書き換えられていく可能性があります。
一人ユニコーンのその先
一人ユニコーンを立ち上げた創業者は、ひとつの企業を作り上げた後に何を目指すのでしょうか。そのままさらなる成長を志向する場合もあれば、例えばイーロン・マスクのように誰かに経営を引き継ぎ、また新たなユニコーンづくりに挑む姿も想像されます。その場合、後継者はどうなるのでしょうか。優れた人材が見つかればよいのですが、人間には不確定要素が大きく、後継者をAIに委ねてしまうという選択肢も考えられます。AIが経営を担うようになると、企業は実質的に経営者も従業員もゼロの無人企業へと移行していく可能性があります。そうした存在は、自律的に利益を生み続ける装置のようになり、重要な意思決定は株主総会で決議され、その方針を受けてAIが経営者として企業運営を担うという姿が浮かびます。
やがてこの段階に至ると、そのような企業は最終的に公共財に近い存在になるのではないでしょうか。国民が広く株式を保有してもよいですし、政府がこうした高収益の無人企業を保有し、その利益が税収に直結することで、大幅な減税が実現する国家の未来も描かれます。
一人ユニコーンの登場は、現れるかどうかの問題ではなく、いつ現れるのかという点に注目が集まります。
非常に興味深い内容でした。将来人間が行う全ての仕事がAIに代わられたら、人間は娯楽を享受するだけの生物になるかもしれませんね。
有難うございます。そういう世の中になったら人間はどうなってしまうのか、こわい感じもありますね。