風邪をひいてわかったこと

先週のことだ。

中学生の息子から「一次関数でわからない問題がある」といわれ、よし、お父さんが解いてみるよ、

と言ってみた。言ったはいいがすぐにペンが止まる。

「あれ、傾きってどうやって求めるんだっけ」

そうつぶやきながら、結局 ChatGPT に聞いてみた。

そうそう、X の変化量分のY の変化量だった。

ちなみに変化量はデルタ(Δ)とも呼ぶ。

ΔY/ΔX

これを「傾き」と呼んでいたのだった。

だんだんいろいろ思い出してきた。ペンが進む。

自分、まだいけるじゃないか、と内心ささやかな喜びを感じた瞬間だった。

後日不思議な時間が訪れた。

子どもが急に熱を出し、学校を休んだ。

ほどなくして治ったものの、今度は私が寝込んだ。

床に伏せるなんて数年ぶりだった。

熱にうなされていた二日間、

私の頭の中をぐるぐる回っていたのは、なぜかあの関数だった。

夢とも現実ともつかない意識の中で、私はひたすら関数問題を解こうとしていた。

正解に届きそうなところで失敗し、決してたどり着けない。

また追いかけては失敗する。

そんな苦しくも奇妙な2日間を過ごした。

やがて、3日目には熱はすっかり下がった。

動かなかった体が何ごともなかったかのように軽くなり、外の景色をみると、まぶしいほど美しく見えた。

風の匂い、空の明るさ、落ち込んでいた心が、健康で再び満たされるような喜びが押し寄せてきた。

そのとき私は思ったのだ。

幸せを感じる強さは関数で表すことができるのではなかろうか、と。

いや、これまでもそんなことを考えたことはあった。

しかしあの悪夢のように、結論にまでたどり着くことはなかった。

だが、今回は頭ではなく、体で悟ったのだ。

人間が感じる「幸せ」というものは、

どうやら 何らかの水準(状態)から生じるのではなく、

変化量Δ(デルタ)によって生まれているのではないか、と。

風邪で動けなくなると、心は沈む。

けれど、そこから回復していく瞬間には、驚くほど強い喜びを感じる。

これはまさに Δ(デルタ)──変化の大きさだ。

財布を落としたときの絶望は深い。マイナスの幸せだ。

だが、見つかった瞬間の喜びはひとしおだ。

目標に向かって長く努力し、ようやく勝ち得たときの達成感。

大事なパートナー等と出会えて同じ時間を過ごし始めたときの高揚感。

けれど、その後変化がなければ喜びは感じられなくなるだろう(例外はあると思いたい)。

ただし失うときにはマイナスの幸せを感じることになるだろう。

それは自然なことだ。関数がそう示している。

幸福とは「何かの水準や状態」から来るものではなく、「変化の傾き」なのだ。

試しに、横軸を時間 (t)、

縦軸をイベントから生じる影響度合い (S)としてグラフを描いてみる。

時間の変化量 Δt を極限まで小さくすると、

ΔS/Δt

は「接線の傾き」になる。

そしてこの「傾き」の大きさこそが、その瞬間に人が感じる喜びの強さを表している。

変化のないとき   : 傾きゼロ → 喜びもゼロ

一気に変化するとき : 傾き大 →大きな喜び/悲しみ

徐々に変化するとき : 傾き小→喜び/悲しみはわずかだが継続する

たとえどれだけ財を成しても、その状態が変わらず続く局面では接線の傾きは限りなくゼロに近い。

だから、喜びはほとんど感じない。(と推察します)

反対に、

どれだけ辛いところにいても、

そこから回復する局面ではプラスの傾きが発生する。

そこに人は強い喜びを感じることになる。

今回、私はこれを「風邪」という小さな出来事で体感した。

経済学の教科書にはこのような理論があるようだが、

今回私は自分の身一つで 「ΔS/Δt」 が幸福を感じる強さを表す、という事実を知った。

だからこそ思う。

喜びの多い人生とは、接線の傾きがプラスになる方向へほんの少しでも自分を動かしていくことなのだ。

派手な変化でなくてもいい。

昨日よりほんの少しでも前に進めば、そこには必ずΔ(デルタ)が生まれる。

人生は長い。

年齢に関係なく、皆様にプラスの傾き(大きければ大きいほどよし)がたくさん生じることを願っております。

    風邪をひいてわかったこと” に対して4件のコメントがあります。

    1. A.Shepp より:

      本当にそうですね。
      足が痛くて、仕事も辛く、大好きな山へも行けず、それでも頑張っていた自分がいましたが、すっかり良くなり、スタスタ歩ける様になり、山や、色々な事が以前の様にできつつある時、凄く幸せを感じました。
      健康って本当に大事ですね。

    2. HATTO COMPANY より:

      良かったです。健康はなによりも大事ですね。無理せずに山も満喫してください!

    3. 前田雅代 より:

      すごい
      風邪で新たな関数を導き出しましたね
      わたくし、週初めに勤務して週末に寝込むを
      繰り返しております。
      ついには、咳込みが始まり、
      電車の中で迷惑をおかけしています(号泣)

      乾燥しているので、やっぱりマスクは必要ですね
      喉の奥がきゅっとして咳になります

      1. HATTO COMPANY より:

        コメントありがとうございます!
        お元気ですか? 暑いと思っていたらあっという間に寒くなりましたね。
        冷え込んできておりますのでご自愛くださいね。

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