【調査レポート】予測市場「Polymarket」の実力

11月3日に行われた米国の中間選挙は、ほぼ結果が確定しつつあります。開票完了まで1週間から10日程度かかるともいわれる中、早くも結果が報じられています。
そのような中、「Polymarket(ポリマーケット)」という予測市場が投票日前から注目されていました。一体、この予測市場とは何なのでしょうか。
Polymarketとは、将来の特定の出来事に対する予測を売買し、その取引価格を通じて実現確率を可視化する市場です。 選挙、経済、金融など、さまざまな出来事が取引の対象となっています。
2年前の2024年米国大統領選挙では、世論調査が接戦を示す一方、Polymarketではトランプ氏の勝利確率が高い数値で示されていたといわれます。
世論調査には回答者の偏りや政治的バイアスが入り込む可能性がありますが、市場参加者の取引によって形成される予測確率は、一体どこまで信頼できるのでしょうか。
予測市場は世論調査と何が違うのか
Polymarketでは、将来の出来事について「Yes(起こる)」と「No(起こらない)」の権利を売買します。
世論調査が「誰を支持するか」を尋ねるのに対し、予測市場は「誰が勝つと考えるか」という予測を取引します。
予測と異なる結果になれば損失が生じるため、支持や願望とは切り離して、合理的に判断しようとする動機が働きます。
結果が確定すると、的中した権利は1口当たり1ドル、外れた権利は原則0ドルになります。
例えば、Yesを0.70ドルで購入した場合、的中すれば0.30ドルの利益です。外れれば拠出した0.70ドルを失います。
Noを0.30ドルで購入した場合、的中すれば1ドルとの差額0.70ドルの利益です。Noが外れれば拠出した0.30ドルを失います。
このように、Yesが0.70ドルで取引されていれば、市場は実現確率をおおむね70%と評価していると解釈できます。
これらの権利は、結果が判明する前であれば市場で売却することも可能です。市場価格が実際の確率より低いと考える人は買い、高すぎると考える人は売ります。
こうした取引を通じて、新しい情報が常に価格に反映されていきます。
価格はどのように形成されるのか
Polymarketの価格は、運営会社ではなく、市場参加者の注文によって決まります。
特徴的なのは、取引に必要な権利を担保から生成できることです。
例えば、AさんがYesを0.60ドル、BさんがNoを0.40ドルで購入する注文を出したとします。
両者の注文が一致すると、合計1ドル相当の資産が担保として確保され、YesとNoの権利が1口ずつ生成されます。
結果が確定すると、的中した権利の保有者が担保の1ドル相当を受け取ります。
つまり、最初から権利を保有する売り手がいなくても、反対方向の注文が一致すれば市場が成立するのです。
生成された権利は、その後も株式のように売買できます。価格は注文の需給によって変動し、予測確率をリアルタイムに映し出します。
なぜ今、予測市場が普及しているのか
実は、予測市場は新しい発明ではありません。1988年には米国のアイオワ大学で、現金を使った電子予測市場が始まっていました。
しかし、これまで国際送金、担保管理、決済コストなどの実務上の制約が、市場拡大の障壁となっていました。
Polymarketは、ステーブルコインとブロックチェーン技術を活用し、さまざまな事象に対する予測市場を急速に拡大してきました。
Polymarketでは、米ドル連動型のデジタル資産を担保に、スマートコントラクトによってYesとNoの権利を生成・管理します。売買注文は取引システムで照合し、権利や担保の受け渡しはブロックチェーン上で処理します。
これにより、従来の銀行決済だけに依存せず、多数の予測市場を共通の仕組みで運営できます。
もちろん、ステーブルコインによって規制や信用リスクがなくなるわけではありません。
Polymarketの革新は、予測市場そのものを発明したことではなく、その取引と決済を標準化し、規模を拡大しやすくしたことにあります。
さらに、参加者が増えるほど流動性が高まり、取引しやすくなり、より多くの参加者を呼び込むというネットワーク効果も期待できます。
集合知はどこまで信頼できるのか
予測市場の価格には、参加者の情報や分析が集約されます。しかし、取引によって形成された価格が、必ずしも正しい確率を示すわけではありません。
大口参加者による価格への影響、政治的な思い込み、流動性の不足などによって、市場が偏る可能性があります。
また、80%と予測された出来事が起こらなかったとしても、それだけで予測が間違っていたとはいえません。もともと20%の可能性があったからです。
予測精度を正しく評価するには、多数の事例について、予測確率と実際の発生頻度がどれだけ一致しているかを検証する必要があります。Polymarketの公式サイトでも、こうした予測精度に関するデータが公開されています。
ちなみに、予測の対象となった出来事の結果が確定せず、争いが生じた場合はどうなるのでしょうか。
例えば、大統領選挙で敗れた候補者が結果を認めず、再集計や訴訟を求めた場合です。正式な結果が確定するまで、長い時間がかかるかもしれません。
そのとき、Polymarketは何をもって勝敗を判断するのでしょうか。
公式サイトによると、Polymarketでは各市場にあらかじめ結果の判定ルールが定められています。
多くの市場では、UMAという分散型の判定システムを利用します。参加者が結果を提案し、異議がなければ確定します。異議が出た場合には紛争解決の手続きに進み、UMAトークン保有者による投票で判断されます。
これは一般利用者による単純な多数決ではなく、事前の判定ルールと証拠に基づいて結果を認定する仕組みです。
つまり、予測の価格形成だけでなく、結果をめぐる紛争の解決にも、参加者による分散型の意思決定が活用されているのです。
未来の予測を市場参加者に委ね、結果の認定に争いが生じれば、そこにも集合的な判断を取り入れる。
Polymarketは、単なる予測サービスではありません。社会に散在する情報や判断を集約し、不確実な未来に価格をつける、新しい市場のあり方を示しているのかもしれません。
※ 日本からの利用について: 2026年11月現在、Polymarketは日本を取引制限対象国に指定しており、日本国内からの取引参加は認められていません。また、予測市場の取引には各国の賭博規制や金融規制が関係するため、市場情報の閲覧と実際の取引は区別する必要があります。
【留意事項】当レポートは各種報道、公開情報等をもとにHATTO COMPANY株式会社が独自に作成したものであり、その正確性を保証するものではありません。



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