【調査レポート(金融・テクノロジー編)】永久先物とは~暗号資産が生み出す新たな市場~

永久先物

最近、「永久先物(Perpetual Futures)」という言葉をたびたび目にするようになりました。

最初は特に気に留めていなかったのですが、よく考えてみると少し不思議です。

先物取引には通常期限があります。3か月後、6か月後など、将来のある時点の価格をいま決めて取引し、期限が来れば決済されます。だから「先物」です。

それなのに、なぜ「永久」なのでしょうか。

調べてみると、永久先物は単に「期限のない先物」というだけではありませんでした。満期がないにもかかわらず現物価格との連動を維持する仕組みがあり、現在では暗号資産市場で巨大な取引市場を形成しています。

この記事では、暗号資産とブロックチェーン技術によって、従来は実務上の制約から実現が難しかった金融取引が、実際の市場として成立し始めている動きに注目します。

1.永久先物で何ができるのか

永久先物を簡単にいえば、原資産そのものを保有せず、その価格変動を取引する、期限のない取引形態です。

例えばビットコインの永久先物を買えば、ビットコインそのものを買わなくても、その値上がりによって利益を得ることができます。逆に、将来値下がりすると考えれば、売りから入ることもできます。

また、現物を保有する投資家が永久先物を売ることで、価格下落をヘッジ(回避)することもできます。期限がないため、必要なときにヘッジし、必要がなくなれば解消できます。

通常の先物との最大の違いは「満期」がないことです。従来の先物では、満期を迎えるたびに次の期限の先物へ乗り換える「ロール」取引が必要ですが、永久先物にはそれがありません。

2.なぜ現物価格から離れないのか ― Funding Rateの仕組み

通常の先物は満期があるため、満期が近づくにつれて現物価格との価格差は収束していきます。しかし、永久先物には満期がありません。

そこで、現物価格との乖離を抑えるために使われるのが「Funding Rate(資金調達率)」という仕組みです。

例えば買い需要が強くなると、永久先物の価格が上昇し、現物価格を上回る方向に働きます。このとき、ロング(買い持ち)側からショート(売り持ち)側へ費用が支払われます(Funding Rateはプラス)。

すると、ロングを保有するコストが高くなる一方、ショートにはその費用を受け取るメリットが生まれます。そのため、新たなロングを抑え、ショートを促す方向に力が働き、永久先物価格を現物価格へ近づけることになります。

反対に、売り需要が強く永久先物価格が現物価格を下回ると、ショート側からロング側へ費用が支払われます(Funding Rateはマイナス)。今度はロングを促し、ショートを抑える方向に力が働きます。

この費用は、売買時に一度だけ支払う手数料ではありません。ポジションを保有している間、取引所によって8時間ごとや1時間ごとなど、一定の間隔で継続的にロングとショートの間で受け払いされます。

つまり永久先物は、「満期による現物価格への収束」を、「Funding Rateによる継続的な価格調整」に置き換えた仕組みと考えると分かりやすいでしょう。

3.30年前の着想を、暗号資産が市場に育てた

永久先物という発想自体は、暗号資産から生まれたものではありません。

1993年、後にノーベル経済学賞を受賞するRobert J. Shillerは、論文で「Perpetual Futures(永久先物)」という契約を提案していました。

このとき Shiller が念頭に置いていたのは、売買頻度が低く、価格が直接見えにくい資産、つまり不動産のようなものでした。そうした資産でも、価格や賃料などの指数をもとに現金で決済する取引があれば、価格を把握しやすくなり、リスクを回避する手段にもなるのではないか、という問題意識です。

ただし、大規模な市場として実現するまでには20年以上かかります。2016年、BitMEXがビットコインを対象とするXBTUSD Perpetual Swapを開始しました。満期がなく、ロングとショートの間で費用を受け払いする、現在の暗号資産の永久先物につながる取引です。

では、なぜ暗号資産の市場だったのでしょうか。

暗号資産は24時間365日取引されます。一方、従来型の先物には満期があるため、同じ対象資産であるにもかかわらず、1か月、3カ月など異なる期限の先物が同時に存在します(暗号資産取引所では週次のものもあります)。その結果、一つの資産を取引しているはずなのに、取引と流動性が複数の先物に分散してしまいます。さらに、満期を迎えるたびに次の先物へ乗り換える「ロール」という面倒な取引も必要になります。

そこで生まれたのが、「そもそも先物に期限は必要なのか」という発想です。

満期をなくして一つの取引に流動性を集め、現物価格との連動は期限ではなくFunding Rateによって維持する。これが永久先物です。

24時間止まらない市場に合わせて、先物から「期限」という制約そのものを取り除いた。永久先物は、単に先物の期限を長くしたものではなく、「先物に満期は必要なのか」を問い直した仕組みともいえるでしょう。

4.永久先物は暗号資産の外へ

CoinGeckoによれば、2025年の主要な中央集権型取引所(CEX)における暗号資産の永久先物の取引高(名目ベース)は、約85兆ドルに達しました。

ただし、この取引高の大半を占めるCEXは、取引所が売買を管理する仕組みで、売買の処理そのものはブロックチェーン上では行われていません。一方で、売買から清算までをブロックチェーン上で行う分散型の市場も急成長しており、2025年の取引高は6兆ドルを超え、前年の4倍以上になりました。

さらに、この仕組みは暗号資産以外の資産にも広がり始めています。個別株式やS&P500等の株価指数、商品など、従来の金融資産の価格を参照する永久先物が、暗号資産の取引所で提供され始めています。暗号資産の市場で磨かれた取引の仕組みが、従来の金融市場へ広がろうとしています。

5.24時間市場には、24時間動く「お金」が必要になる

ここで、もう一つ重要な存在がステーブルコインです(ステーブルコインについてはこちらのレポート参照)。

市場だけが24時間動いても、資金を動かせなければ十分には機能しません。例えば週末に相場が急変して追加証拠金が必要になれば、取引だけでなく、資金移動や担保、決済も市場と同じ時間軸で動く必要があります。

USDTやUSDCなどのステーブルコインは、米ドルなどに価値を連動させながら、ブロックチェーン上で移転できます。市場が24時間化したとき、「お金」も24時間動く必要があったのです。

さらに重要なのは、ステーブルコインがブロックチェーン上の資産として、プログラムから直接扱えることです。取引、証拠金管理、清算、資金移動といった処理を、あらかじめ決めたルールに従って連続的に実行できます。

従来は、送金、担保管理、決済が別々のシステムや事業者にまたがっていました。ブロックチェーン技術は、これらを同じデジタル基盤の上で、簡単に行えるようにしつつあると言えるでしょう。

6.「出来事の確率」まで市場になり始めた

同じ基盤は、価格以外のものを取引する市場にも使えます。それが、Polymarketなどの予測市場です。

取引されるのは資産の価格ではなく、将来の出来事が起きるかどうかです。例えば、「次回のFOMCでFRBは利上げするか」、「次の米国大統領選挙で誰が勝つか」といった出来事までもが取引の対象になります。

仕組みはシンプルです。例えば「FRBが利上げする」というYESが0.70ドルで取引されているとします。実際に利上げすれば1ドルが支払われ、しなければ0ドルです。1ドルを受け取る可能性に0.70ドルの価格がついているため、市場がおおむね70%の確率を織り込んでいると読むことができます。

自分は80%だと思えば買い、50%だと思えば売る。さまざまな情報や予想を持つ参加者の取引によって価格が形成されます。いわゆる「Wisdom of the Crowd(群衆の知恵・集合知)」を、市場価格として表す仕組みです。

永久先物も予測市場も、もともとの発想そのものが新しかったわけではありません。大きく変わったのは、暗号資産とブロックチェーン技術によって、従来は実務上の制約から実現しにくかった取引を、実際の市場として成立させやすくなったことです。永久先物が「先物には期限がある」という前提を取り払ったように、予測市場は「何を市場で取引できるのか」という範囲を広げています。

7.リスクと、賭博との線引き

永久先物含め先物取引は、レバレッジ取引が前提のため、価格が逆に動くとポジションが強制的に決済されます(強制清算)。2025年の相場急落時には、50億ドルを超える強制清算が発生しました。Funding Rateも、払う側に回れば保有するほどコストがかさみます。

予測市場には、別の問いがあります。賭博との違いです。日本の刑法は、偶然の勝敗によって財物などを賭ける行為を賭博として処罰の対象としており(185条・186条)、金銭などを賭ける予測市場もこれに該当し得ると、法律の専門家から指摘されています。日本から資金を投じて参加すれば、利用者自身が賭博罪に問われるおそれがあるともいわれます。

一方で、予測市場は情報を集めて将来の見通しを価格で示す仕組みでもあり、単なる賭けとは違うという見方もあります。海外でも扱いは割れており、韓国の規制当局は2026年8月ごろ、Polymarketが違法な賭博環境を提供しているとして、接続を遮断するよう求める議決をしました。線引きは、まだ定まっていません。

むすびに

永久先物は、「先物には期限がある」という前提を問い直しました。予測市場は、「何を市場で取引できるのか」という範囲を広げました。どちらも、暗号資産とブロックチェーン技術によって、これまで実現しにくかった取引が実際の市場になった例です。

一方で、新しい市場は、既存のルールが想定していなかった問いも生みます。予測市場と賭博をどう区別するのかは、その一つです。技術の進歩に、制度の議論がどう追いついていくのか。今後も注目していきたいと思います。

本稿は情報提供を目的としたものであり、特定の商品の売買や取引への参加を勧誘するものではなく、法的な判断を示すものでもありません。内容は2026年9月時点の情報に基づきます。暗号資産およびそのデリバティブ取引は、価格変動やレバレッジにより元本を上回る損失が生じるおそれがあります。

“【調査レポート(金融・テクノロジー編)】永久先物とは~暗号資産が生み出す新たな市場~” に対して3件のコメントがあります。

  1. 久保昌也 より:

    いつもいい情報をありがとうございます。
    今回はしっかり読みました。
    想像を超えた知らない世界があるのですね。

    1. HATTO COMPANY より:

      コメントありがとうございます!今回少し長くなりましたが、世の中の大きな変化だと感じましたのであえて書いてみました。

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